理事長就任のご挨拶

 この度、小島前理事長の後任として理事長に就任いたしました小西です。12年前から理事として、2年前から常務理事として皆様にお世話になったことを改めて感謝しております。敬愛する黒崎幸吉先生が創立された登戸学寮の理事長としての大役を命ぜられ、責任の大きさに身の引き締まる思いがしております。私と登戸学寮との係わりの一端をご紹介してご挨拶に代えさせていただきます。

 私の母が、黒崎先生の関西の集会に長らく出席していたこと、私自身も、学寮創立時に理事として黒崎先生を支えられた樋口久一先生の集会に通っていたこともあり、1970年春東京の大学進学時に学寮に入れていただきました。豪放磊落で愛情あふれる村井長正先生から聖書の手ほどきや戦前戦後の激動の時代背景について良き薫陶を受けました。学寮創立の理念ともいえる聖書の一節「汝の若き日に汝の造り主を覚えよ」という言葉がその後の私の人生の「道しるべ」になりました。

 井の中の蛙であった私にとって、学寮での共同生活は、当時大学紛争直後で多様な価値観がぶつかり合う中で、お互いの違いを認めながら生活するという訓練の場になり、社会人になり、組織の中で働くうえで大変役立ちました。学寮になじんできたころ、将来の進路、何のために働くのかという問題に悩みました。その頃、学寮と縁の深かった三重県の愛農学園高校で行われた聖書講習会に参加した際に、「神を愛し、人を愛し、土を愛する」という言葉に出会いました。これが、大学卒業後、霞が関で「食と農」を扱う農林水産行政に従事するきっかけになりました。30数年にわたり、農業者、消費者そして国民のために仕えることを学びました。第一線を退いた今も、特定NPO法人のワールド・ビジョン・ジャパンの役員として、世界の貧しい子供たちを支援するボランティア活動をさせていただいております。これも、登戸学寮で培った価値観、人生観のおかげと感謝しています。

 現代の社会、内外の情勢を見ると、戦争や分断、貧困や経済格差、心身の健康不安など、様々な問題に直面し、先が読めない混とんとした時代になっています。であればこそ、登戸学寮での共同生活を通じて、生涯の良き友に出会い、「相手を思いやる心」と「人生で遭遇する様々な問題に立ち向かう勇気」を養うことの意義は大きいと信じています。今後とも皆様のご理解、ご指導を賜りますようお願いいたします。また、学寮の特色を理解していただける学生が身近におられればぜひご紹介して頂ければ幸いに存じます。

ようこそ

 登戸学寮の創立の精神は「汝ら若き日にその創造主を憶えよ」という聖書の言葉にありますが、寮生がその聖書の学びを通して世界に通用する広い教養を身につけ、相手を思いやる心を養うことを目指しています。

 登戸学寮は、公益財団法人として営利を目的としない学生寮であり、一つの大学だけではなく、首都圏のいろいろな大学の学生が集まっています。また、男子だけでなく女子の学生も、日本人だけでなく留学生も一緒に、多様性に溢れ、楽しく有意義な交流ができる場を提供します。

 東京近郊にありながら豊かな自然環境に恵まれ、加えて食事の美味しさは寮生のお墨付きです。先が見通せない、難しい時代にあって、登戸学寮で人生の基礎工事を行いつつ、明日の世界を担う社会人を目指し、充実した日々を送られることを期待致します。

                                                                         2025年6月7日

                                                                        公益財団法人登戸学寮

                                                                          理事長 小西 孝蔵

理事長プロフィール                      

1950年9月4日兵庫県西宮市生まれ、1970年4月登戸学寮入寮、1975年4月東京大学法学部卒業後農林水産省に入省。米国インディアナ州立パデュー大学農業経済学部大学院留学(MS取得)、栃木県庁農業経済課長出向、在連合王国大使館出向(参事官)、農林水産省秘書課長、林政部長、国際部長、農林水産政策研究所長等を経て、2008年農林水産省退職。2008年~2014年農林中央金庫監事(常勤) 2019年~20023年特定NPO法人ワールド・ビジョン・ジャパン理事長、現在同監事、2013年~2023年登戸学寮理事、2023年~2025年常務理事、2025年6月同理事長就任

 

寮長着任のご挨拶

学寮の中庭では、春風かおる満開の桜のもと、おだやかな陽だまりのなか、一人の寮生 が鍵針を自由自在に操り黒いネットを編み挙げている。芝のうえでは甲子園出場の新寮生 が鋭い素振りをつづけ、サッカー少年の新寮生は先輩とボールを蹴り合い戯れている。62 年間桜並木に囲まれた学寮はいつもこのように若い力が輝く春を迎えていたのであろう。 この春は、しかし、世界を覆う疫病によりこの学寮も著しい緊張のなかに置かれている。 学寮に辿り着いた新寮生はまだ8人。一人でも感染したなら保健所の指導のもと封鎖され 消毒されることになるだろう・・・。新米寮長の心には、創設者黒崎幸吉先生の天上にお いてかはたまた生前の蓄積され続けたそれであるのか、登戸学寮へのお護り、お導きを祈 る篤い祈りが響き、小さな祈りは先生の祈りにより力強く増幅され、福音が生き生きと魂 の内奥に明確に感じとられ励まされている。(4月3日の学寮の一光景)

この4月から登戸学寮寮長として着任いたしました千葉惠です。哲学の教育・研究に30 年従事しましたが、「理論は実践により信用される」という先哲の言葉に倣い、テクスト を離れ学生諸君と共に生活することになりました。学生諸君の心身の健康を守りそして希 望をもって社会に飛び立つお手伝いを妻美佐子とともにできればと願っております。コロ ナ騒動による大嵐の船出ですが、創設時寮を囲む枡形山の台形の形姿にノアの方舟が連想 されましたように、新寮生十数名をお迎えしてのこの航海も護られることでありましょう。運 営の基本は黒崎先生以来の伝統です。私どもの外に明確に打ち立てられた福音、罪が二千 年前の十字架上で赦されたことに対する喜びです。何がなくとも天国の新鮮な空気を吸い ながら喜んで過ごし、その姿が若い魂に伝わればと存じます。

本年、学寮は小島拓人理事長を始め理事の方々、職員の方々の献身的な率先垂範のもと に60周年記念行事ならびに修繕事業を企てます。目標を超える多くの方々のご厚志にた だ感激しております。このお支え、期待になんとかお応えできればと心から願っておりま す。

地上の日々の営みではこの共同体も多くの異見に囲まれましょう。しかし、パウロとと もに「一つのこと」即ちこの福音については、それが私どもの外に生じた恩恵であるが故 にこそ誰もが同意でき、人類は大丈夫だという思いに満たされ、この根幹から多くの案件 についても「同じ思慮」に至ることでありましょう。「かくして、もしキリストにある何 らかの援け、愛の慰め、霊の交わり、憐み、そして慈しみがあるのなら、汝らわが喜びを 満たせ。それは汝らが同じ愛を持つことによって、魂を共にかよわせることによって、一 つのことを思慮することによって、汝らが同じことを思慮するためである」(ピリピ2:1- 2)。今・ここで何らかの憐み、慈しみ、援けが生起しますなら、一同、同じ思いが分かちあ われたことへの喜びに満たされることでありましょう。同じ主ご自身が共にいたまうからです。天来の恩恵にあずかりうることを無上の光栄としつつ、主にあって一つのことに思 いを馳せよきお交わり、お導きを賜りえますなら幸甚に存じます。

2020年4月5日
新寮長 千葉 惠

 
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新寮長プロフィール
宮城県古川(現大崎)市出身、慶応義塾大学法学部政治学科卒業、同文学研究科哲学科修士・博士課程、オックスフォード大学人文学科博士課程修了(哲学博士 D.Phil. in Philosophy)。北海道大学文学部助教授を経て教授、特任教授、現在名誉教授


 
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